技術 色の恒常性:環境光と色の見え方の関係
私たちの目は、周りの明るさが変わっても、物の色を同じように見ることができる素晴らしい能力を持っています。これを色の恒常性と言います。この能力のおかげで、私たちは普段、物の色を認識する際に、照明による影響を意識することはありません。例えば、晴れた日の屋外で赤いリンゴを見たとしましょう。太陽の光は白っぽく、リンゴに反射した光も白っぽい成分を含んでいます。しかし、私たちの目はリンゴを「赤い」と認識します。次に、同じリンゴを白熱灯のついた室内で見てみましょう。白熱灯の光はオレンジ色っぽく、リンゴに反射した光もオレンジ色がかって見えます。しかしそれでも、私たちの目はリンゴを「赤い」と認識するのです。もし色の恒常性がなかったら、世界はどう見えるでしょうか? 夕焼け時、空が赤く染まると、白い紙も赤く見えてしまうでしょう。曇り空の下では、すべての物が青みがかって見えるはずです。屋内では、使っている照明の種類によって、物の色が全く違って見えてしまうでしょう。このような世界では、物の色を正しく認識することは非常に困難になり、日常生活に大きな支障が出てしまうでしょう。では、私たちの目はどのようにして色の恒常性を実現しているのでしょうか? それは、脳が周囲の照明環境を自動的に判断し、その影響を差し引いて物の色を認識しているからです。例えば、白熱灯の光の下では、赤いリンゴはオレンジ色っぽく見えます。しかし、脳は照明がオレンジ色っぽいことを認識し、その分を差し引いて「赤い」と判断します。この複雑な処理のおかげで、私たちはどんな照明の下でも物の本来の色を認識することができるのです。色の恒常性は、私たちが周りの世界を理解し、快適に生活するために欠かせない、驚くべき能力と言えるでしょう。
