
フォトマスク:半導体製造の影の立役者
電子機器の心臓部である集積回路、いわゆるICを作るには、設計図が必要です。その設計図の役割を担うのが「光遮蔽膜」です。 光遮蔽膜は、半導体を作る材料である、円盤状の「基板」の上に、回路を焼き付けるための型のようなものです。基板は、ケイ素という物質からできています。この基板の上に、光遮蔽膜を通して光を当てます。まるで写真をとる時のように、光遮蔽膜をネガフィルムに見立てて、基板に光を当てて焼き付けるのです。光遮蔽膜には、転写したい回路模様が、目には見えないほど細かい線で描かれています。 この細かい線は、顕微鏡を使ってもなかなか見えないほどです。光が当たる部分は化学変化を起こし、光が当たらない部分とは異なる性質になります。この性質の違いを利用して、光が当たった部分とそうでない部分を区別し、不要な部分を溶かしていくことで、最終的に複雑な回路模様が基板上に作られます。この工程は、版画を作る作業に似ています。版画では、版木に描かれた模様以外の部分を彫り進め、インクを付けて紙に転写することで版画が完成します。光遮蔽膜は、版画でいう版木の役割を果たしていると言えるでしょう。精巧なICを作るためには、設計図である光遮蔽膜の精密さが非常に重要です。 光遮蔽膜の精度が高ければ高いほど、より微細で高性能なICを作ることができるのです。現代社会を支える様々な電子機器は、この光遮蔽膜によって作られるICによって動いていると言っても過言ではありません。