
写真におけるハレーション:光と影の芸術
写真の強い光源、例えば太陽や照明などがレンズに入り込むと、本来写るはずのない部分が明るくなってしまう現象を、私たちは「ハレーション」と呼んでいます。まるで絵画のように、被写体の縁が白くぼやけてしまう様子は、写真に雰囲気を与えることもありますが、意図しない場合には写真の印象を大きく変えてしまうこともあります。
このハレーションは、レンズの中で光が乱反射することで起こります。カメラのレンズは、複数のレンズを組み合わせて作られていますが、光がこれらのレンズ表面で反射を繰り返すことで、本来進むべき道筋から外れてしまい、センサーに届いてしまうのです。これが、写真の一部が不自然に明るくなる原因です。また、フィルムカメラの場合には、フィルム自体が光を感知する役割を果たしますが、強い光が当たるとフィルムの感光層が飽和状態になり、その結果、周辺部分まで明るく滲んでしまうこともあります。デジタルカメラで使われるセンサーでも、強い光が入ると、電気信号に変換する際に情報が飽和し、ハレーションが発生することがあります。
ハレーションは、光源の種類や強さ、カメラの設定、レンズの特性など、様々な要素が複雑に絡み合って発生します。例えば、逆光で撮影する際に、太陽光が直接レンズに入り込むとハレーションが発生しやすくなります。また、レンズの表面に汚れや傷があると、そこで光が乱反射し、ハレーションの原因となることもあります。カメラの設定も大きく影響し、絞り値を小さくすると、レンズに入る光の量が増えるため、ハレーションが発生しやすくなります。反対に、絞り値を大きくすることで、レンズに入る光の量を制限し、ハレーションを抑えることができます。
ハレーションは、写真の仕上がりを大きく左右する要素の一つです。望まないハレーションを防ぐためには、レンズフードを装着したり、撮影角度を調整するなどの工夫が必要です。しかし、一方で、ハレーションを意図的に利用することで、幻想的な雰囲気を演出することも可能です。写真家は、このハレーションの特性を理解し、作品作りに活かしているのです。