
不思議なベシキュラー画像の世界
記録材料は、熱で形を変える性質を持つ樹脂の中に、光に反応するジアゾニウム塩という物質が細かく散らばった構造をしています。このジアゾニウム塩は、普段は樹脂の中に安定して存在していますが、紫外線のような強い光を当てると分解を始めます。この分解の過程で、ジアゾニウム塩は窒素ガスを発生させます。この小さな窒素ガスの泡こそが、画像を作り出す重要な役割を担います。
紫外線を照射する時、強い光が当たる部分はジアゾニウム塩の分解が活発に進み、たくさんの窒素ガスが発生します。一方、光が弱い部分は分解も少なく、窒素ガスの発生量も少なくなります。このように、光の強弱によって窒素ガスの発生量に差が生じます。
次に、この記録材料を加熱します。加熱によって樹脂が柔らかくなると、閉じ込められていた窒素ガスは膨張し始めます。すると、樹脂の中に小さな泡ができます。この泡は、たくさんの小さな風船のように光をあらゆる方向に散乱させるため、白く見えます。この泡のことを「ベシキュラー」と呼びます。
光が強い部分にはたくさんのベシキュラー、光が弱い部分には少ないベシキュラーができます。こうして、光の強弱がベシキュラーの量の差に変換され、画像として見えるようになります。まるで、光を閉じ込めた小さな風船が無数に集まって、濃淡のある画像を形作っているかのような仕組みです。この、熱と光を巧みに利用した記録材料こそが、ベシキュラー画像の心臓部と言えるでしょう。