
人間の目の順応:明暗への適応
明るい場所に急に移動すると、最初は強い光に目がくらみますが、しばらくすると自然と見ることができるようになります。これは、私たちの目が周囲の明るさに合わせて機能を調整する、明順応という働きのおかげです。明順応は、およそ3カンデラ毎平方メートル以上の明るさから働き始め、まぶしさを軽減しながら光に目を慣れさせていく過程を指します。
この明順応を主に担っているのが、錐状体と呼ばれる視細胞です。私たちの目には、錐状体と桿状体という二種類の視細胞が存在します。桿状体は暗い場所で機能し、明暗を識別する役割を担っています。一方、錐状体は明るい場所で働き、色覚を認識する役割を担っています。つまり、昼間の鮮やかな視界は、錐状体のおかげで見えているのです。例えば、太陽の下で周囲の景色をはっきりと認識できるのも、この錐状体の働きによるものです。
錐状体は色覚だけでなく、細かいものを見分ける視力にも大きく貢献しています。読書や細かい作業をする際に、文字や対象物を正確に捉えることができるのは、錐状体が機能しているおかげです。錐状体には、赤、緑、青の光にそれぞれ反応する3種類があり、これらの錐状体が受け取る光の量のバランスによって、私たちは様々な色を識別することができます。
明順応は、明るい環境で快適に過ごすために、そして周囲の世界を鮮明に捉えるために、人間の目にとって非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。もし明順応がうまく機能しないと、明るい場所で常にまぶしさを感じてしまい、日常生活に支障をきたす可能性も考えられます。私たちが何気なく過ごしている日常も、目の驚くべき機能によって支えられているのです。