
写真の「引き」:効果的な使い方
写真は奥が深いものです。同じ被写体でも、少し位置を変えるだけで全く違った印象になります。この違いを生み出す要素の一つに「引き」の技法があります。「引き」とは、被写体から距離を置いて撮影することを指します。遠くの景色を写すという意味ではなく、同じ被写体をより離れた場所から写すということです。
例えば、人物を撮る場面を考えてみましょう。胸から上を写すのと、数歩後ろに下がって全身を写すのでは、写真の印象が大きく変わります。後者が「引き」の技法を使った例です。被写体との距離を広げることで、周りの景色や状況がより多く写真に収まります。人物だけでなく、背景にある建物や周りの人々、空の様子なども一緒に写ることで、被写体がいる場所の空気感や状況がより伝わりやすくなるのです。
また、「引き」の技法は、被写体と周りのものの大きさ比べにも役立ちます。例えば、小さな花を撮る際に、すぐ近くから撮るよりも、少し離れて周りの草木と一緒に撮ることで、花の小ささが強調され、可憐な印象を与えます。逆に、大きな建物を撮る際に、近くから見上げるように撮るよりも、遠くから周りの風景と一緒に撮ることで、建物の大きさが際立ち、雄大な印象になります。このように「引き」の技法は、被写体と周りのものの関係性を効果的に表現することができるのです。
被写体だけを大きく写す「寄り」の技法とは対照的に、「引き」の技法は、被写体が置かれた状況や雰囲気までも写し撮ることができます。そのため、写真全体で物語を伝えるような、奥行きのある表現が可能になります。状況説明や雰囲気作りに最適な技法と言えるでしょう。