多重解像度解析

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技術

ウエーブレット符号化:画像圧縮の革新

写真は、光の濃淡を記録したものですが、実は波として捉えることもできます。波には大小様々なものがあり、小さな波は細部を表し、大きな波は全体の形を表します。ウエーブレット符号化とは、この波の考え方を用いて、写真の情報を効率的に整理し、データ量を小さくする技術です。 例えるなら、風景写真の中に、大きな山、小さな木、葉っぱ一枚一枚といった様々な大きさのものが写っているとします。ウエーブレット符号化では、この風景を、様々な大きさの波の重ね合わせとして表現します。山の形は大きな波で、木の形は中くらいの波で、葉っぱの形は小さな波で、といった具合です。そして、それぞれの波の強さを調整することで、元の風景を再現します。 この技術の重要な点は、「多重解像度表現」という考え方です。多重解像度表現とは、写真を縮小コピーのように、様々な大きさで段階的に表現する手法です。大きな写真を見れば全体の形が分かり、小さな写真を見れば細部が分かります。ウエーブレット符号化では、この多重解像度表現によって、写真の情報を整理します。 多重解像度表現を実現するために、「双直交フィルターバンク」という道具を使います。これは、写真に含まれる様々な大きさの波を、ふるいにかけるように分離する道具です。大きな波、中くらいの波、小さな波…と、それぞれの波を別々に取り出すことができます。 こうして波ごとに分離された情報の中から、不要な情報を削ることで、データ量を小さくします。例えば、小さな波は細部を表すものですが、データ量が多い割に、人の目にはそれほど影響を与えない部分もあります。そこで、小さな波の情報の一部を思い切って削ることで、データ量を大幅に減らすことができるのです。一方で、大きな波は全体の形を表す重要な情報なので、丁寧に保存します。このように、波の大きさごとに適切な処理を行うことで、写真の質を保ちつつ、効率的にデータ量を小さくすることができるのです。