
先幕シンクロで躍動感を捉える
写真は、光を描く芸術とも言えます。その光を操る方法の一つに、動きの表現があります。動きを捉えるためには、シャッター速度、絞り、感度といった設定が重要ですが、それらを組み合わせた撮影技法も数多く存在します。今回は、数ある技法の中でも、被写体の動きをより生き生きと表現できる「先幕同期」について詳しく説明します。
「先幕同期」とは、一体どのような技法なのでしょうか。カメラのシャッターには、幕が二枚付いています。一枚目の幕が開いて光を取り込み、二枚目の幕が閉じて露光を終わらせます。この二枚の幕の動きとストロボの発光タイミングを組み合わせることで、様々な効果を生み出すことができます。「先幕同期」では、一枚目の幕が開いた瞬間にストロボを発光させます。つまり、露光が始まると同時に被写体が明るく照らされ、その後、シャッターが開いている間に被写体の動きが記録されるのです。
この技法を使うことで、被写体の動きに合わせて、光跡が被写体の後ろに伸びる独特の効果が得られます。例えば、夜の街を走る車を撮影する場合、車の軌跡が尾を引くように光跡として写り、スピード感が強調されます。スポーツ選手を撮影する際にも、選手の動きの軌跡が光跡として残り、躍動感あふれる写真に仕上がります。
一方、ストロボを使わずにシャッター速度を遅くして動きを捉える方法では、被写体の像がブレてしまい、動きがぼやけてしまうことがあります。しかし、「先幕同期」を使うことで、被写体はストロボの光でしっかりと捉えられ、その後に続く動きは光跡として表現されるため、被写体の輪郭ははっきりとしつつ、動きの軌跡も同時に表現することが可能になります。
「先幕同期」は、動きのある被写体を撮影する際に、その魅力を最大限に引き出す強力な技法です。この技法を理解し、使いこなすことで、写真の表現力は格段に向上するでしょう。ぜひ、色々な被写体で試してみて、写真の新たな可能性を探求してみてください。