
何度でも印字!熱転写マルチリボンの秘密
熱転写マルチリボンは、何度も繰り返し印字できる特殊なリボンです。通常の熱転写リボンは一度印字するとインクが転写されて無くなってしまいますが、マルチリボンは巧妙な仕組みでインクを何度も供給できる構造になっています。代表的な構造として「石垣構造」と「海島構造」の二種類があります。
石垣構造は、その名の通り石垣をイメージすると分かりやすいです。石垣は石を積み重ねて作られますが、石と石の隙間がありますよね。マルチリボンの石垣構造では、リボンに含まれるインク層の中に、融点の低いインク成分が詰まっているのです。まるで石垣の隙間に水が溜まっている様子を想像してみてください。印字のために熱を加えると、この低融点インクが熱で溶けて表面に滲み出てきます。まるで石垣の隙間から水が湧き出すように、必要な量のインクだけが供給されるので、何度も印字することが可能になるのです。
一方、海島構造は、薄いインク層が何層にも重なって構成されています。名前の通り、海に浮かぶ島々が連なる様子を思い浮かべてください。一つ一つの島が薄いインク層を表しています。印字のために熱が加えられると、表面のインク層だけが転写され、次の層が現れる仕組みです。まるで玉ねぎの皮を一枚ずつ剥ぐように、熱を加えるたびに新しいインク層が供給されます。このため、何度も繰り返し印字できるのです。
このように、熱転写マルチリボンは、石垣構造と海島構造という二つの異なる仕組みでインクを供給しています。これらの構造によって、リボンの寿命が長くなり、経済的な印字を実現できるのです。環境にも優しく、様々な分野で活躍が期待されています。