
ヘアメイクの魔法:映像と写真の芸術性を高める
動く絵巻物、すなわち映画やテレビ芝居において、髪型や化粧は役者の演じる人物像を映し出す上で欠くことのできない大切なものです。たとえば、時代劇で武士を演じる際には、髪をまげに結い上げ、眉を太く描くことで、おごそかな雰囲気や力強さを表すことができます。また、現代劇で心に傷を負った主人公を演じる際には、やつれた様子を出すために、目の下のくまを強調した化粧や、何気なく整えた髪型にすることもあります。
このように、髪型や化粧は役者の外見を変えるだけでなく、内面までも表し、見ている人に役柄への共感をより深くさせる大切な役割を担っています。物語が生まれた時代背景や役柄の性格、心の動きの変化などを、髪型や化粧を通して細かく表すことで、物語に奥行きと現実味を与えることができます。時代劇で身分の高いお姫様を表現する際は、豪華なかんざしを用いたり、白塗りの化粧を施したりすることで、上品さと高貴さを演出できます。反対に、貧しい町娘を表現する際は、髪をシンプルにまとめ、化粧も控えめにすることで、つつましい印象を与えます。
さらに、特殊な化粧の技術を用いれば、年老いた役や怪我の表現、空想世界の登場人物など、役者の変化は無限に広がります。例えば、特殊な材料を用いて顔に傷跡を作ったり、シワやたるみを増やすことで、老け役をリアルに表現できます。また、怪物の扮装や未来的な人物像など、現実には存在しないキャラクターを作り出すことも可能です。傷跡一つとっても、その大きさや形、色合いによって、登場人物の過去や性格を暗示することができます。
髪型や化粧を作る職人の独創性と技術力が、動く絵巻物の世界観を作り上げ、物語をより心を惹きつけるものにするのです。一つの作品を作り上げるためには、監督や脚本家、役者など、多くの人の力が必要です。その中で、髪型や化粧を作る職人は、役者の外見だけでなく内面までも表現し、物語の世界観を構築する上で、重要な役割を担っていると言えるでしょう。