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技術

テレシネ:映像の架け橋

テレシネとは、フィルム映像をテレビや計算機などで見られる形に変換する技術、またその変換に使う装置のことを指します。フィルムは、実はパラパラめくりの絵のように連続した一枚一枚の絵からできています。これをそのままテレビや計算機で見ようとすると、動きの滑らかさが失われたり、ちらつきが発生したりしてしまいます。そこで登場するのがテレシネです。 テレシネは、フィルムに焼き付けられた一つ一つの絵を読み取り、テレビや計算機で扱える映像信号に変換します。フィルムの絵は一秒間に二十四枚、テレビの絵は一秒間に三十枚(あるいは二十五枚)ほど表示されますので、絵の枚数を調整する必要があります。例えば、二十四枚の絵を三十枚にするには、フィルムの四枚の絵を五枚に増やすといった処理を行います。 さらに、テレシネは単なる絵の枚数変換だけでなく、画質調整も行います。フィルムは経年劣化により色あせたり、傷が付いたりすることがあります。テレシネでは、これらの劣化を補正し、本来の色味や明るさを再現しようと試みます。また、フィルム独特の質感や雰囲気をデジタル映像でも再現するための技術も用いられます。 このように、テレシネは昔のフィルム映像を現代の機器で楽しめるようにするための、フィルムと現代の映像技術を繋ぐ大切な役割を担っています。古き良き映画を現代に蘇らせる、いわば映像のタイムマシンのようなものと言えるでしょう。
保存

DVDのリージョンコードとは?

皆さんがよく目にする、映画やテレビ番組などを収めた丸い光る円盤。これは、正式にはデジタル多用途円盤と呼ばれ、略してDVDと呼ばれています。この円盤には、映像や音声といった情報をたくさん詰め込むことができます。中でも、DVDビデオは、高画質で映画やテレビ番組を楽しめるので、広く知られています。 さて、このDVDビデオには少し変わった仕組みがあります。それは、場所によって再生できるものとできないものがあるということです。まるで世界地図をパズルのようにいくつかの地域に区切り、それぞれの地域に特別な番号を割り振っているのです。この番号のことを「地域番号」と呼びます。日本で売られているDVDビデオには「2」という番号が、DVDを再生する機械にも同じ「2」という番号が付けられています。だから、日本で買ったDVDビデオは、日本で買った再生機できちんと再生できるのです。 ところが、例えば、遠い北米で売られているDVDビデオには「1」という番号が付いています。日本の再生機は「2」なので、北米のDVDビデオを再生しようとすると、再生機は「これは見られません」とばかりに再生を拒否してしまうのです。まるで言葉が通じない外国の人と話すようなものですね。 なぜこんなややこしい仕組みになっているのでしょうか?それは、作った人たちの権利を守ったり、販売戦略をうまく進めるためです。詳しいことは、次の項目で説明しますので、楽しみにしていてください。
画質

写真と動画の画質:SDからHDへ

標準画質(エスディー)とは、かつてテレビ放送で広く使われていた画質の基準のことです。ブラウン管テレビが家庭に普及していた時代には、この画質が映像の主流でした。画面の横方向に並ぶおよそ640個の点と、縦方向に並ぶおよそ480個の点で構成されています。点のことを画素(がそ)と呼び、この一つ一つの画素が集まって模様を作り、それが動いて映像として認識されます。つまり、標準画質の映像は、およそ30万個の画素によって表現されていることになります。また、横方向におよそ720個、縦方向におよそ480個の画素で表示されるものもあり、いずれも標準画質と呼ばれています。 家庭用のビデオテープやDVDなどには、この標準画質で録画された映像が多く残されています。かつては、これらの機器で録画したり再生したりして、家族の思い出などを残していました。また、テレビ放送もこの画質が主流でしたので、過去のテレビ番組なども標準画質で保存されているものが多くあります。 近年のテレビは、より多くの画素を使って映像を表現する高画質(エイチディー)が主流となっています。高画質は、標準画質に比べてより多くの画素で映像を表示するため、きめ細かく、鮮明な映像を見ることができます。たとえば、木の葉の一枚一枚や、人の髪の毛一本一本まで、くっきりと映し出すことが可能です。そのため、標準画質の映像を高画質のテレビで再生すると、どうしても映像の粗さが目立ってしまいます。特に、画面の大きなテレビでは、その差がより顕著になります。 技術の進歩によって高画質が普及した現在では、標準画質の映像を見る機会は少なくなってきています。しかし、過去の映像作品の中には、標準画質でしか残っていない貴重な記録も多くあります。そのため、標準画質とはどのようなものか、その特徴を理解しておくことは大切です。
保存

完成品への道のり:マザーテープの重要性

「元の型」となる映像や音声の記録媒体、いわゆる「主要記録媒体」についてご存じでしょうか?これは、映像や音声の編集作業がすべて完了し、最終確認を終えた、まさに完成版と言える記録媒体です。様々な工程を経て、ようやく出来上がった大切な記録媒体であり、これから作られるたくさんの複製品の、まさに出発点となるのです。 この主要記録媒体は、その後、販売や放送など様々な用途のために、数え切れないほどの複製品を作るための原版として使われます。いわば、たくさんの複製品を作る工程の、最初の大切な一歩を担う重要な役割を担っていると言えるでしょう。主要記録媒体から複製品を作る際には、元の型の持つ質をそのまま保つことが非常に重要になります。わずかな劣化も許されないため、主要記録媒体の作成には細心の注意が払われます。記録媒体の種類や状態に合わせて、最適な機器と方法が選ばれ、熟練の技術者によって慎重に作業が行われます。 さらに、作成後も厳重な管理体制のもとで保管されます。温度や湿度の管理はもちろんのこと、埃や光からも守られるよう、専用の保管庫で大切に保管されます。また、許可のない持ち出しや複製を禁じるなど、厳格なセキュリティ対策が施されています。まさに、主要記録媒体は、映像や音声作品にとって、心臓部と言えるほど大切な存在であり、その品質と安全性を守るための様々な工夫が凝らされているのです。主要記録媒体は、高品質な複製品を世に送り出すための、欠かすことのできない存在と言えるでしょう。
アナログ

懐かしのテレビ方式:NTSC

「全米テレビジョン放送方式標準化委員会」。この長々とした名称を縮めて、「NTSC」と呼びます。アルファベット4文字のこの言葉は、かつてお茶の間の主役であったブラウン管テレビの時代を語る上で欠かせないものです。NTSCとは、一体どんなものだったのでしょうか。 NTSCは、その名の通り、アメリカで設立された委員会が定めたカラーテレビ放送の規格です。色鮮やかな映像を家庭に届けるためには、様々な技術的な取り決めが必要になります。例えば、画面を構成する走査線の本数、一秒間に表示する画像の数(フレームレート)、そして色の情報をどのように伝えるか(色信号伝送方式)などです。これらの要素を細かく規定することで、テレビ局とテレビ受像機の間で齟齬が生じることなく、視聴者は安定した映像を楽しむことができます。NTSCはこのような役割を担い、日本やアメリカ、韓国など、多くの国で採用された世界標準の一つとなりました。 NTSC方式では、走査線は525本、フレームレートは毎秒30枚と定められていました。また、色信号の伝送方式には、位相変換方式と呼ばれる特殊な技術が用いられていました。これは、白黒テレビ放送との互換性を保ちつつ、色情報を加えるための工夫です。限られた電波帯域の中で、いかに効率的に色を表現するか。当時の技術者たちの知恵と努力が凝縮されています。 近年では、デジタル放送への移行が進み、ブラウン管テレビは姿を消しつつあります。それと同時に、NTSCという言葉も耳にする機会は少なくなりました。しかし、かつてテレビ放送の基盤技術として活躍したNTSCは、現代の技術発展の礎を築いた重要な存在と言えるでしょう。ブラウン管テレビの時代を支えた立役者として、その功績は決して色褪せることはありません。