
磁力を操る軟磁性材料:その特性と応用
磁気を帯びていない物質でありながら、磁石を近づけると磁気を帯び、磁石を遠ざけると磁気がなくなる不思議な物質、それが軟磁性材料です。まるで磁石の力をコピーして、すぐに忘れてしまうような性質を持っています。専門的には、外部から磁界を加えると容易に磁化され、磁界を取り除くと速やかに磁化を失う物質と定義されています。
この磁化しやすい性質と磁化を失いやすい性質の両方を兼ね備えていることが、軟磁性材料の最大の特徴です。磁石のようにずっと磁力を持ち続ける物質(硬磁性材料)とは大きく異なり、この特徴が様々な機器で活用されています。
身近な例として電磁石が挙げられます。電磁石は、電流を流すと磁力を発生し、電流を止めると磁力が消える性質を利用しています。この電磁石の心臓部には軟磁性材料が使われており、電流のオンオフに合わせて磁力を制御することを可能にしています。また、電気を送るための変圧器にも軟磁性材料は欠かせません。変圧器は、交流電流の電圧を変える装置ですが、これも軟磁性材料の磁化のしやすさ、失いやすさを利用して効率的に電圧を変換しています。
私たちの身の回りにある電子機器、例えば、携帯電話、パソコン、テレビ、冷蔵庫など、実に多くの機器に軟磁性材料が組み込まれています。これらの機器の中で、軟磁性材料は縁の下の力持ちとして活躍し、私たちの生活を支えていると言えるでしょう。目には見えないところで活躍する軟磁性材料ですが、そのおかげで私たちは快適な生活を送ることができているのです。