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写真技術の基礎:無機系感光体

写真の技術は、光を捉えて、それをずっと残る形に変える技術です。この技術で一番大切なのは、光に反応する部分です。光に反応する部分は、光を受けると電気的な性質が変わり、この変化を利用して画像を作ります。光に反応する部分には、大きく分けて生き物由来のものとそうでないものの二種類があります。今回は生き物由来でないものについて詳しく説明します。生き物由来でないものは、安定していて丈夫なので、色々な場面で使われています。 生き物由来でない光に反応する部分は、主に金属や金属の化合物でできています。例えば、昔のカメラで使われていた銀塩写真では、ハロゲン化銀という物質が光に反応する部分として使われていました。ハロゲン化銀は、光を受けると銀原子とハロゲン原子に分かれます。この銀原子が集まることで、黒い像ができます。これが写真の元となるものです。銀塩写真は、解像度が高く、美しい階調表現が特徴です。 現代のデジタルカメラや複写機、印刷機などでは、光導電体と呼ばれるものが広く使われています。光導電体は、光を受けると電気を通すようになる性質があります。代表的な光導電体としては、セレン、アモルファスシリコン、酸化亜鉛などがあります。これらの物質は、光によって電気抵抗が変化するため、光の強弱を電気信号に変換することができます。この電気信号を処理することで、デジタル画像として記録したり、印刷したりすることが可能になります。 光導電体は、繰り返し使える、応答速度が速い、感度が高いといった特徴があります。そのため、様々な機器で重要な役割を果たしています。例えば、複写機では、原稿に光を当て、反射した光を光導電体に当てます。光が当たった部分は電気を通すようになるので、そこにトナー(粉状のインク)が付着します。そして、そのトナーを紙に転写することで、コピーができます。このように、光に反応する部分は、写真技術の進化に大きく貢献してきました。今後も新しい材料の開発や技術の進歩によって、さらに高画質、高性能な画像技術が生まれていくことでしょう。
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未来を描く光:非晶質シリコン

非晶質シリコンとは、結晶構造を持たないシリコンのことです。シリコンと聞くと、半導体や太陽電池などを思い浮かべる方が多いかもしれません。これらの用途で使われるシリコンは、原子が規則正しく並んだ結晶シリコンです。一方、非晶質シリコンは、原子の並び方がランダムで、まるで液体がそのまま固まったような不規則な構造をしています。この構造の違いが、結晶シリコンと非晶質シリコンの性質の違いを生み出しています。 非晶質シリコンは、シランと呼ばれるガスを原料に作られます。シランガスは、シリコン原子と水素原子が結合したガスです。このガスを、真空状態にした装置の中に導入し、グロー放電と呼ばれる方法で処理します。グロー放電とは、ガスの中に電圧をかけ、プラズマと呼ばれる状態を作り出すことで化学反応を起こさせる方法です。プラズマの中では、シランガスが分解され、シリコン原子と水素原子に分かれます。そして、基板上にシリコン原子が堆積し、非晶質シリコンの膜が形成されます。 この時、生成された非晶質シリコンには、水素原子が多量に含まれています。このため、水素化非晶質シリコンと呼ばれ、a-SiHと表記されます。実は、この水素原子が非晶質シリコンの品質を大きく左右します。非晶質シリコンは、原子の並び方がランダムなため、結晶シリコンに比べて欠陥が生じやすい性質があります。しかし、水素原子がシリコン原子間の結合を安定化させることで、欠陥の少ない良質な膜を作ることができます。水素は、非晶質シリコンにとって、まさに縁の下の力持ちと言えるでしょう。 このようにして作られた非晶質シリコンは、薄くて軽い太陽電池や液晶ディスプレイなどに利用されています。結晶シリコンに比べて製造コストが低く、広い面積にも成膜できるため、様々な分野で活躍が期待されています。