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ゼータ電位:表面電荷の秘密

物質の表面は、正または負の電気を帯びることがあります。この表面の電気的性質は、物質が他の物質とどのように作用するかを大きく左右するため、物質の性質を理解する上で非常に重要です。表面の電気を表す指標として、表面電位とゼータ電位という二つの用語があります。これらは似ているようですが、異なる概念であり、その違いを正しく理解することが重要です。 表面電位とは、物質の表面そのものが持っている電位のことです。固体表面は、様々な要因で電荷を帯びます。例えば、物質を構成する分子の性質や、周囲の環境との相互作用などです。この電位は、物質の表面に直接接触した点における電位を表しています。 一方、ゼータ電位は、物質が液体中に分散している場合に用いられる概念です。液体が物質の表面に接触すると、イオンが表面に引き寄せられ、電気二重層と呼ばれる層が形成されます。この電気二重層は、物質表面に強く結合した層と、より緩やかに結合した拡散層からなります。物質が液体中で移動すると、この拡散層との境界で滑りが生じます。ゼータ電位は、この滑り面における電位のことを指します。つまり、表面電位は物質表面そのものの電位を示すのに対し、ゼータ電位は物質と液体の界面での見かけの電位を示すと言えるでしょう。 具体的に例を挙げると、水中に分散した微粒子を考えると、微粒子の表面電位は微粒子表面そのものの電位ですが、ゼータ電位は微粒子と周囲の水の界面における電位を表します。ゼータ電位は、微粒子の分散安定性に大きく影響します。ゼータ電位の絶対値が大きいほど、微粒子同士の反発力が強くなり、凝集しにくくなります。逆に、ゼータ電位の絶対値が小さいと、微粒子は凝集しやすくなります。このように、ゼータ電位は、物質の分散状態や安定性を予測する上で重要な指標となります。表面電位とゼータ電位の違いを理解することで、物質の表面における電気的性質をより深く理解し、様々な応用につなげることが可能になります。