
光を電気に変える不思議な物質
非晶質光導電体とは、光を照射することで電気を通すようになる物質です。まるで魔法のように光に反応して性質を変えることから、様々な機器で利用されています。結晶のように原子が規則正しく並んでいる物質とは異なり、非晶質光導電体は原子の並び方が不規則です。一見すると乱雑なこの構造こそが、光導電体としての優れた特性を生み出す秘密なのです。
非晶質光導電体は、大きく二つの種類に分けられます。一つは、ケイ素を主成分とするものです。ケイ素原子は、正四面体構造と呼ばれる、三角錐を合わせたような形を基本単位として結合しています。この構造が、光エネルギーを効率よく吸収する性質を生み出します。代表的な用途としては、太陽電池や複写機などがあります。太陽電池では、光エネルギーを電気に変換することで発電を可能にし、複写機では、光の当たり具合で電気抵抗が変化することを利用して画像を形成します。
もう一つは、セレンやテルルといった元素を主成分とするものです。これらの元素はカルコゲン元素と呼ばれ、非晶質状態でも安定した構造を作りやすいという特徴があります。このため、均一な品質の光導電体膜を作ることができ、高感度のセンサーや光記録媒体など、精密な制御が求められる用途に適しています。セレンを使った光導電体は、かつてはドラム式の複写機やレーザープリンターで広く使われていましたが、近年では環境への影響が少ない有機光導電体への置き換えが進んでいます。とはいえ、その優れた特性は今もなお研究開発が続けられており、新しい応用が期待されています。