
カチンコ:映像制作の縁の下の力持ち
映画やテレビ番組などの動画作品を制作する過程で、音声と映像をピッタリ合わせる作業は大変重要です。この作業を助ける道具こそが「カチンコ」です。カチンコは、黒板に似た板と、それを開閉できる拍子木の部分が組み合わさってできています。板の部分には、作品名、撮影日、撮影場所、何回目の撮影かといった情報が白いチョークなどで書き込まれます。撮影開始の合図とともに、この拍子木を勢いよく閉じると、「カチン!」という音が鳴ります。この音と、同時に記録される映像を後で編集作業で照合することで、音声と映像のずれを修正し、ピッタリと同期させることができるのです。
カチンコの役割は、音声と映像を同期させるだけではありません。板に書き込まれた情報は、膨大な量の映像データの中から目的の場面を探し出すための重要な手がかりとなります。例えば、編集作業中に「夕焼けの場面を使いたい」となった時、カチンコの板に「夕焼け」と書いてあれば、容易にその場面を見つけることができます。また、何回目の撮影かも記録されているので、監督が「3回目の撮影の映像を使おう」といった指示にもスムーズに対応できます。
さらに、カチンコは撮影現場の雰囲気作りにも一役買っています。「カチン!」という音は、撮影開始の合図であると同時に、スタッフ全員の気持ちを一つにまとめる効果があります。この音を聞くと、役者やスタッフは自然と緊張感を高め、撮影に集中できるようになります。このように、一見地味に見えるカチンコですが、動画制作においてはなくてはならない、縁の下の力持ちと言えるでしょう。