
滑らかさの秘密:滑性層の役割
印刷物を作る工程で、インクを紙に写す役割を担うのが加熱部分です。この加熱部分は、熱を通す頭という意味を持つ部品で、薄い膜のようなリボンに染み込ませたインクを熱で紙に定着させる働きをします。このリボンは、インク色素を含んだ帯状のフィルムで、インク・リボンと呼ばれています。熱を通す頭はこのインク・リボンを加熱することで、鮮やかな印刷を実現するのです。
しかし、高温になる熱を通す頭にインク・リボンが直接触れると、リボンが溶けて熱を通す頭に張り付いてしまうという困ったことが起こります。まるで飴が熱い鉄板にくっつくように、インク・リボンが熱を通す頭に融着してしまうのです。こうなると、印刷がかすれたり、線が途切れたりして、綺麗な印刷物が作れなくなってしまいます。
そこで、この問題を解決するために、インク・リボンの裏側には「滑りやすい層」と呼ばれる特別な層が作られています。この滑りやすい層は、熱を通す頭とインク・リボンの間の摩擦を少なくする、いわば潤滑油のような役割を果たします。摩擦が減ることで、リボンは熱を通す頭にくっつかずにスムーズに動くことができ、安定した印刷が可能になるのです。
この滑りやすい層は、薄い膜でありながら、高い耐熱性と滑りやすさを両立しています。まるで氷の上を滑るスケート靴のように、インク・リボンが熱を通す頭の上を滑らかに移動することを可能にし、高品質な印刷を支えているのです。普段は目に触れることのない部分ですが、美しい印刷物を作り出す上で、この滑りやすい層は欠かせない存在と言えるでしょう。