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セカム方式:知られざるテレビの彩り

セカム方式とは、フランスで生まれた、地上波の電波を使ってカラーのテレビ番組を届けるための方法の一つです。正式には「セカンシエル・クルール・ア・メモワール」と呼び、日本語では「記憶による順次カラー」という意味になります。この名前の通り、色の情報を時間をずらして送る「線順次方式」という方法を使っています。 少し詳しく説明すると、テレビ画面は細かい線がたくさん集まってできています。セカム方式では、一つの線には色の情報を全部乗せず、線ごとに違う色の情報だけを交互に送るのです。例えば、一本目の線には赤色の情報、次の線には青色の情報、またその次の線には緑色の情報というように送ります。そして、人間の目には残像効果があるので、これらを全部合わせることで、画面全体では自然なカラー映像に見えるという仕組みです。 この方法だと、色同士が混ざって画像がぼやけてしまう現象を防ぐことができ、鮮やかな映像を作ることができます。しかし、色の情報を送る回数が減るため、画面が少しちらついて見えることもありました。 日本ではあまり知られていませんが、セカム方式はフランスだけでなく、かつてのソ連や東ヨーロッパの国々、中東の一部など、世界の色々な地域で使われていました。今では、技術の進歩によって、電波ではなくデジタル信号でテレビ番組を送る方法が主流になっており、セカム方式が使われることはほとんどなくなりました。しかし、カラーテレビの歴史を語る上では、セカム方式は重要な役割を果たした技術と言えるでしょう。
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懐かしのテレビ方式:NTSC

「全米テレビジョン放送方式標準化委員会」。この長々とした名称を縮めて、「NTSC」と呼びます。アルファベット4文字のこの言葉は、かつてお茶の間の主役であったブラウン管テレビの時代を語る上で欠かせないものです。NTSCとは、一体どんなものだったのでしょうか。 NTSCは、その名の通り、アメリカで設立された委員会が定めたカラーテレビ放送の規格です。色鮮やかな映像を家庭に届けるためには、様々な技術的な取り決めが必要になります。例えば、画面を構成する走査線の本数、一秒間に表示する画像の数(フレームレート)、そして色の情報をどのように伝えるか(色信号伝送方式)などです。これらの要素を細かく規定することで、テレビ局とテレビ受像機の間で齟齬が生じることなく、視聴者は安定した映像を楽しむことができます。NTSCはこのような役割を担い、日本やアメリカ、韓国など、多くの国で採用された世界標準の一つとなりました。 NTSC方式では、走査線は525本、フレームレートは毎秒30枚と定められていました。また、色信号の伝送方式には、位相変換方式と呼ばれる特殊な技術が用いられていました。これは、白黒テレビ放送との互換性を保ちつつ、色情報を加えるための工夫です。限られた電波帯域の中で、いかに効率的に色を表現するか。当時の技術者たちの知恵と努力が凝縮されています。 近年では、デジタル放送への移行が進み、ブラウン管テレビは姿を消しつつあります。それと同時に、NTSCという言葉も耳にする機会は少なくなりました。しかし、かつてテレビ放送の基盤技術として活躍したNTSCは、現代の技術発展の礎を築いた重要な存在と言えるでしょう。ブラウン管テレビの時代を支えた立役者として、その功績は決して色褪せることはありません。