写真撮影の基礎:バックフォーカスを理解する

写真撮影の基礎:バックフォーカスを理解する

写真について聞きたい

先生、「バックフォーカス」って写真撮影でよく聞く言葉ですが、どんな意味ですか?

写真研究家

いい質問だね。「バックフォーカス」とは、カメラのレンズの一番後ろから、光を受け取って画像にするセンサーまでの距離のことだよ。カメラの奥行き部分の長さだと考えてもいいよ。

写真について聞きたい

距離…ですか? なぜその距離が大切なんですか?

写真研究家

レンズを通ってきた光をきちんとセンサーに届けるために、適切な距離が必要なんだ。特に、一眼レフカメラのように鏡が入っているカメラは、鏡の分だけ距離が長くなる。逆に、鏡のないミラーレスカメラは短くできるんだよ。

バックフォーカスとは。

写真の撮り方や写真の加工に関する言葉で「後ろ焦点」というものがあります。後ろ焦点とは、レンズの一番後ろから、光を受け取って画像にする部分までの距離のことです。一眼レフカメラのように、鏡の箱が入っているカメラでは、この後ろ焦点は長くなります。逆に、鏡の箱がないミラーレスカメラでは、後ろ焦点を短くすることができます。

バックフォーカスの定義

バックフォーカスの定義

写真撮影の世界で「後ろ焦点」と呼ばれるものがあります。これは、レンズの一番後ろからカメラの撮像素子までの距離のことです。この距離は、カメラの構造、特に反射鏡の有無によって大きく変わります。

一眼レフカメラのように反射鏡があるカメラでは、反射鏡を動かすための空間が必要です。そのため、後ろ焦点は長くなります。この構造は、レンズを通ってきた光を反射鏡で反射させ、ファインダーに像を映し出すために必要です。しかし、反射鏡があることでカメラ本体が大きくなってしまうという欠点もあります。

一方、反射鏡がないミラーレスカメラでは、後ろ焦点を短くできます。ミラーレスカメラは、レンズを通ってきた光を直接撮像素子に当てて像を捉えます。反射鏡がない分、カメラ本体を小さく軽く作ることが可能です。また、後ろ焦点が短いことで、レンズ設計の自由度も高まります。例えば、より明るく、より鮮明な写真が撮れるレンズを作ることが可能になります。

このように、後ろ焦点はカメラの設計やレンズの性能に大きな影響を与えます。カメラを選ぶ際には、後ろ焦点の違いも考慮することで、自分の撮影スタイルに合ったカメラを見つけることができるでしょう。具体的には、後ろ焦点が短いカメラは、小型軽量で持ち運びに便利です。また、明るいレンズを使用できるため、暗い場所での撮影にも有利です。逆に、後ろ焦点が長いカメラは、レンズ設計の自由度が制限される場合がありますが、一眼レフカメラでは光学ファインダーを通して直接被写体を確認できるという利点があります。

項目 一眼レフカメラ ミラーレスカメラ
後ろ焦点 長い 短い
反射鏡 あり なし
カメラサイズ 大きい 小さい
レンズ設計の自由度 制限される 高い
メリット 光学ファインダーで被写体を確認できる 小型軽量、明るいレンズを使用可能、暗い場所での撮影に有利
デメリット 大きい、重い

一眼レフカメラにおけるバックフォーカス

一眼レフカメラにおけるバックフォーカス

一眼レフカメラ特有の仕組みであるバックフォーカスについて詳しく見ていきましょう。一眼レフカメラは、ファインダーを覗いて被写体を確認するために、カメラ内部にミラーボックスと呼ばれる部品が組み込まれています。このミラーボックスは、レンズから入ってきた光を反射させてファインダーに送る役割を果たします。そして、シャッターボタンを押すと、このミラーが瞬時に跳ね上がり、光がセンサーに直接当たることで写真が撮影されるのです。

このミラーが跳ね上がる動作には、ある程度の空間が必要です。このミラーとセンサーの間の距離がバックフォーカスと呼ばれています。一眼レフカメラでは、ミラーの動作空間を確保するために、どうしてもバックフォーカスが長くなってしまいます。

この長いバックフォーカスは、レンズ設計に大きな影響を与えます。特に、広い範囲を写し込む広角レンズでは、レンズの後玉(カメラに近い方のレンズ)を大きく設計する必要があるため、バックフォーカスの長さが制約となり、設計が難しくなるのです。レンズの設計が複雑になることで、製造コストにも影響が出ることがあります。また、バックフォーカスが長い分、カメラ全体の大きさも大きくなる傾向があります。

ミラーレスカメラが登場した背景の一つには、この一眼レフカメラのバックフォーカスの問題を解決するという狙いもありました。ミラーレスカメラではミラーボックスがないため、バックフォーカスを短く設計することができます。そのため、より小型軽量で高性能なレンズの開発が可能となりました。一眼レフカメラの設計上の制約であったバックフォーカスは、カメラの進化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

項目 説明
一眼レフカメラのミラーボックス ファインダーに被写体像を投影するために、レンズからの光を反射させる部品。
バックフォーカス ミラーとセンサー間の距離。ミラーの動作空間を確保するために必要。
バックフォーカスの影響(一眼レフ)
  • 広角レンズの設計が難しくなる(後玉を大きく設計する必要があるため)
  • 製造コスト増加の可能性
  • カメラの大型化
ミラーレスカメラ ミラーボックスがないため、バックフォーカスを短く設計可能。小型軽量・高性能なレンズ開発が可能。

ミラーレスカメラにおけるバックフォーカス

ミラーレスカメラにおけるバックフォーカス

枠のない鏡のような箱がない、それがミラーレス一眼の特徴です。一眼レフと比べて、映像を写す部品と撮像素子間の距離(これを後ろ焦点距離、あるいはバックフォーカスと言います)を縮めることができます。この構造上の利点のおかげで、レンズ作りの自由度が大きく広がります。

特に、広い範囲を写し込む広角レンズや、たくさんの光を取り込める大口径レンズを作る際に、この短い後ろ焦点距離が役立ちます。一眼レフでは鏡の箱が邪魔をして、レンズを撮像素子に近づけるのが難しかったのですが、ミラーレス一眼ではそれが可能になったのです。結果として、写りの良い、かつ小さなレンズが作れるようになりました。

例えば、星空を広く写し込むための広角レンズを想像してみてください。ミラーレス一眼なら、たくさんの光を取り込める明るいレンズでありながら、コンパクトな設計が実現できます。また、人物を背景からくっきりと浮かび上がらせるために使う大口径レンズも、ミラーレス一眼なら小型軽量化が可能です。高画質を維持しつつ、持ち運びしやすいレンズが実現できるのは、ミラーレス一眼の大きな強みと言えるでしょう。

さらに、カメラ本体も小型軽量化できる点も見逃せません。部品が少なくなることで、カメラ全体がコンパクトになります。一眼レフに比べて軽く、小さいため、気軽に持ち運んで、いつでもどこでもシャッターチャンスを逃しません。旅行やイベントなど、荷物を少なくしたい時にも、ミラーレス一眼は心強い味方です。高画質と携帯性を両立させたミラーレス一眼は、まさに写真愛好家にとって理想的なカメラと言えるでしょう。

ミラーレス一眼の特徴 メリット 具体例
  • 鏡の箱がない(ミラーレス)
  • 撮像素子とレンズの距離が短い(短いバックフォーカス)
  • カメラ本体の小型軽量化
  • レンズ設計の自由度向上
  • 高画質と小型軽量化の両立
  • 携帯性の向上
  • 広角レンズ:星空撮影に最適な明るいレンズ
  • 大口径レンズ:背景ぼかしに最適な明るいレンズ
  • 旅行やイベントでの持ち運びに便利

バックフォーカスとレンズ設計

バックフォーカスとレンズ設計

写真機の心臓部ともいえるレンズ。その設計において『後方焦点距離』は、レンズの性能を左右する重要な要素です。後方焦点距離とは、レンズの最終面から撮像素子までの距離のことです。特に、広い範囲を写し取る広角レンズでは、この距離がレンズ設計に大きく影響します。

一眼レフ写真機は、写真を撮る際に鏡を使って像をファインダーに送る仕組みになっています。この鏡を動かすための空間が必要なため、必然的に後方焦点距離が長くなります。広角レンズを作る際、この長い後方焦点距離が設計上の制約となります。レンズの後端を撮像素子に近づける必要があるため、レンズの設計が複雑になり、理想的なレンズ配置を実現することが難しくなります。結果として、写真の隅が歪んでしまったり、像がぼやけてしまったり、周辺部の明るさが中心部と比べて暗くなってしまったりといった画質の低下につながる可能性があります。

一方、鏡のないミラーレス写真機では、後方焦点距離を短くすることができます。撮像素子とレンズの最終面を近づけることができるため、広角レンズの設計自由度が飛躍的に高まります。レンズを理想的な位置に配置しやすくなることで、歪みや周辺減光といった問題を効果的に抑えることができます。また、レンズ全体の小型化・軽量化にも貢献し、より高性能で使いやすい広角レンズの開発が可能になります。

このように、後方焦点距離は、レンズ、特に広角レンズの設計において重要な役割を果たしています。写真機の機種によって後方焦点距離が異なるため、それぞれの特性を理解した上でレンズを選ぶことが、高画質な写真撮影への第一歩と言えるでしょう。

項目 一眼レフカメラ ミラーレスカメラ
後方焦点距離 長い 短い
広角レンズ設計 制約あり。理想的なレンズ配置が難しく、歪み、ぼけ、周辺減光などの画質低下が発生しやすい。 自由度が高い。理想的なレンズ配置が可能で、歪みや周辺減光などの問題を抑え、小型軽量化も実現。
影響 画質の低下につながる可能性がある 高性能で使いやすい広角レンズの開発が可能

バックフォーカスとフランジバック

バックフォーカスとフランジバック

写真撮影において、ピント合わせは非常に重要です。そのピント合わせに深く関わるのが「後ろ焦点距離」と「フランジバック」という概念です。どちらもレンズとカメラ本体の構造に関わる用語ですが、微妙に異なります。まず、フランジバックとは、レンズを取り付ける部分(レンズマウント)の基準面から、撮像素子(センサー)までの距離のことを指します。この距離はカメラ本体によって決まっており、各メーカー、各機種でそれぞれ固有の値を持っています。

次に後ろ焦点距離について説明します。後ろ焦点距離とは、レンズの最後尾のレンズ面から、撮像素子までの距離を指します。この距離はレンズによって異なり、ピント合わせの際にレンズが前後する範囲も考慮する必要があります。一眼レフカメラの場合、ミラーを動かすための空間が必要となるため、この空間を確保した上で後ろ焦点距離を割り当てる必要があります。

ここで重要なのは、後ろ焦点距離はフランジバックの一部であるということです。フランジバックの長さから、ミラーの可動範囲やその他の機構のための空間を差し引いたものが、後ろ焦点距離となります。つまり、フランジバックが短いカメラでは、レンズ設計の自由度が高まります。なぜなら、ミラーの可動範囲などを考慮しても、十分な後ろ焦点距離を確保できるからです。

近年人気を集めているミラーレスカメラは、一眼レフカメラにあるミラーボックスを必要としません。そのため、フランジバックを短く設計することができます。フランジバックが短いことで、多様なレンズ設計が可能になり、広角レンズや大口径レンズの実現、あるいは古いレンズをアダプターを介して使用することが容易になります。これが、ミラーレスカメラで様々なメーカーから多様なレンズが提供されている理由の一つです。このように、フランジバックと後ろ焦点距離は、カメラとレンズの設計において重要な要素であり、写真の写りにも影響を与えます。

まとめ

まとめ

写真機の裏側にある受光部品までの距離を「後ろ焦点距離」と呼びます。これは、写真機の設計、特に鏡箱の有無によって大きく左右されます。一眼式写真機は、鏡箱のために後ろ焦点距離が長く、写真機の奥行きが大きくなります。一方、鏡がない写真機は後ろ焦点距離が短く、写真機全体を小さく軽く作ることができます。

この後ろ焦点距離の違いは、写真レンズの設計にも大きな影響を与えます。一眼式写真機では、長い後ろ焦点距離に合わせてレンズを設計する必要があります。これは、レンズの設計に制約を課し、特に広角レンズを作るのが難しくなります。また、レンズの大きさや重さも増す傾向にあります。

鏡がない写真機は、後ろ焦点距離が短いため、レンズ設計の自由度が高まります。広角で明るいレンズや、歪みが少なく、隅々まで鮮明に写るレンズを、より小型軽量に作ることが可能になります。これは、高性能な写真レンズの開発を促進し、写真の画質向上に大きく貢献しています。

写真機を選ぶ際に、この後ろ焦点距離の特徴を理解していると、自分の撮影スタイルに合った写真機を選びやすくなります。例えば、持ち運びやすさを重視する人は、後ろ焦点距離の短い、鏡がない写真機が適しています。また、高性能なレンズで高画質な写真を撮りたい人にも、鏡がない写真機は魅力的な選択肢となります。

後ろ焦点距離は、写真機の大きさやレンズの性能に直結する重要な要素です。写真愛好家にとって、後ろ焦点距離への理解は、写真機や写真レンズ選びの際に役立つでしょう。より深く理解することで、自分に最適な機材を選び、より質の高い写真撮影を楽しむことができるはずです。

項目 一眼式写真機(鏡箱あり) 鏡なし写真機
後ろ焦点距離 長い 短い
写真機の大きさ 大きい、重い 小さい、軽い
レンズ設計 制約が多い(広角レンズ設計が難しい) 自由度が高い
レンズの大きさ・重さ 大きい、重い 小さい、軽い
画質 高画質化に貢献
向き不向き 持ち運び重視、高画質を求める人