ドロップフレーム:動画と時間の微妙な関係
写真について聞きたい
先生、『ドロップフレーム』って、白黒テレビがカラーになったせいでフレーム数が減ってズレが生じるから、それを直すためのものだっていうのはなんとなくわかったんですけど、どうしてズレが生じるんですか?
写真研究家
そうか。カラー放送になった時に、色に関する情報を送る必要ができたため、少しだけ動画の送る速さを落とさないといけなくなったんだ。そのために、1秒あたり送るコマの数をほんの少しだけ減らしたんだよ。1秒に30コマだったのを、29.97コマにしたんだね。
写真について聞きたい
0.03コマ減っただけですよね?そんなに大したことなさそうだけど…
写真研究家
それが、塵も積もれば山となる、でね。1秒あたり0.03コマの差でも、1時間だと108コマもの差になるんだ。テレビ番組やコマーシャルのように、時間がきっちり決まっているものだと、このズレが大きな問題になる。そこで、ドロップフレームを使ってズレを調整しているんだよ。
ドロップフレームとは。
白黒テレビの時代は、一秒間に30枚の絵を繋げて動画にしていましたが、カラーテレビになったときに色の情報を加えるため、一秒間に29.97枚の絵しか繋げなくなりました。このわずかな差は、時間が経つにつれて大きくなり、放送時間がきっちり決まっている番組やテレビの広告では大きな問題になります。そこで、この時間のずれを直すために「ドロップフレーム」という方法が使われます。例えば、60分の動画では108枚の絵のずれが生じます。このずれを埋めるため、0分、10分、20分、30分、40分、50分以外の分に、それぞれ2枚の絵を追加します。全部で54箇所に2枚ずつ絵を追加することで、実際の時間と動画の中の時間が一致するようになります。しかし、最近はインターネットで動画を公開することが増え、時間制限が厳しくない場合も多いです。そのような場合はドロップフレームを使わず、そのままでも問題ありません。
色の変化が生んだ時間差
かつて、映像の世界は白黒の時代でした。画面に映し出される動きは、毎秒30枚の絵、つまり30フレームと呼ばれる単位で送られていました。一枚一枚の絵が連続して切り替わることで、滑らかな動きを作り出していたのです。しかし、技術の進歩とともに、色鮮やかな世界がテレビ画面に到来しました。カラー放送の始まりです。これは映像の世界に革命をもたらしましたが、同時に、予期せぬ問題も引き起こしました。
カラー放送では、白黒の時代に比べて、色の情報を映像に加える必要がありました。この色の情報は、映像信号の中に組み込まれるわけですが、これが微妙な時間差を生む原因となったのです。限られた信号の中に色の情報を詰め込むため、映像を送る速度、つまりフレームレートをわずかに落とす必要がありました。具体的には、毎秒30フレームから29.97フレームへと、ほんのわずかですが速度が落とされたのです。
この変化は、一見すると小さな差に思えます。しかし、この小さな差が積み重なると、無視できない影響が出てきます。1秒間に0.03フレームの差は、塵も積もれば山となるように、時間とともに大きなズレへと変わっていきます。1時間では1.08秒、1日では25.92秒ものズレになるのです。これは、放送時間が厳密に決められているニュース番組や、秒単位で時間を管理する必要があるテレビ広告にとっては、大きな問題です。ほんのわずかな時間のズレが、番組全体の構成を狂わせたり、広告の正確な放送時間に影響を与えたりする可能性があるからです。カラー化によって豊かな映像表現が可能になった一方で、時間の正確さという新たな課題への対応が必要となったのです。
項目 | 白黒時代 | カラー時代 | 影響 |
---|---|---|---|
フレームレート | 30fps | 29.97fps | – |
色の情報 | なし | あり | 微妙な時間差 |
1秒間のズレ | 0 | 0.03フレーム | – |
1時間のズレ | 0 | 1.08秒 | 番組構成への影響 |
1日のズレ | 0 | 25.92秒 | 広告の正確な放送時間への影響 |
ずれを解決する技術
動画と音声は、それぞれ記録の方法が違います。動画はコマ送りで、音は連続した波形で記録されます。この違いが、動画と音声の時間にずれを生じさせる原因となります。動画の時間管理には、一般的に「タイムコード」と呼ばれるものを使います。タイムコードは、時、分、秒、コマで時間を表す方法です。例えば、ニュース番組でよく見る時刻表示のようなものを想像してみてください。ところが、動画の標準的なコマ数は毎秒30コマですが、音の記録方法は毎秒29.97コマに相当する速さで行われます。このわずかな差が、動画が長くなるにつれて大きなずれになっていくのです。
この時間差を解消するために使われるのが、「落としコマ」と呼ばれる技術です。一体どういうものなのでしょうか。「落としコマ」とは、実際には存在しないコマをタイムコード上に追加することで、現実の時間とタイムコードの表示を一致させる方法です。具体的に説明しましょう。1時間、つまり60分の動画の場合、音と動画の時間の差は108コマにまで広がります。この108コマを、動画全体に均等に割り振るのではなく、「0分、10分、20分、30分、40分、50分」の分の頭を除いた54箇所の分の頭に2コマずつ追加します。つまり、これらの分の最初の2コマはタイムコード上では存在しますが、実際の動画には存在しないコマとして扱われます。こうして、時間のずれを補正するのです。少し複雑に思えるかもしれませんが、放送業界では正確な時間管理を行う上で欠かせない技術となっています。この技術のおかげで、私たちは動画と音声がぴったり合った映像を楽しむことができるのです。
項目 | 内容 |
---|---|
動画記録 | コマ送り(例:30コマ/秒) |
音声記録 | 連続した波形(例:29.97コマ/秒相当) |
時間管理 | タイムコード(時、分、秒、コマ) |
ずれの問題 | 動画と音声の記録方法の違いにより時間ずれが発生 |
落としコマ | 動画と音声の時間差を解消する技術 |
落としコマの仕組み | 実際には存在しないコマをタイムコード上に追加 (例:1時間動画の場合、54箇所の分の頭に2コマずつ追加) |
効果 | 時間ずれの補正 |
具体的な方法
動画を扱う時、時間を正確に管理することはとても大切です。そのために「落とし込みコマ送り」という少し変わった方法が使われることがあります。これは、記録される映像と実際の音声のずれをなくすための工夫です。
時間を「時分秒コマ」の形で表すのが一般的ですが、落とし込みコマ送りでは、特定の瞬間に実際よりもコマ数を少なく表示することでずれを調整します。
例えば、1分が経った時、本来は「00010000」と表示されるべきです。しかし落とし込みコマ送りでは、「00010002」と表示されます。これは最初の1分間に2つのコマを意図的に「落とした」ことを意味し、この操作で時間のずれを調整しているのです。
もう少し詳しく説明すると、1秒間に30コマの動画の場合、1分間では1800コマになります。しかし、落とし込みコマ送りでは、1分間に1798コマだけを数えます。2コマ減らすことで、音声とのずれを調整しているわけです。
この「コマ落とし」は、10分ごとに1回行われます。ただし、00分と30分は例外で、コマ落としは行われません。このように、特定のタイミングでコマを調整することで、全体として映像と音声の時間を一致させているのです。
この方法は、一見複雑に思えるかもしれませんが、映像と音声の同期を保つためには不可欠な技術です。特にテレビ放送など、正確な時間管理が必要な場面では、落とし込みコマ送りが重要な役割を果たしています。
時間 | 本来のコマ数 | 落とし込みコマ送りでのコマ数 | コマ落とし |
---|---|---|---|
1分 | 1800 | 1798 | 2コマ |
10分 | 18000 | 17978 | 22コマ(1分毎に2コマ, 計10回と、00分と30分を除く計10分間の20コマ分で合計22コマ) |
00分,30分 | 1800(1分) | 1800 | 0コマ |
補足説明
- 1秒間に30コマの動画を想定。
- コマ落としは10分ごとに1回、計2コマ落とす。
- 00分と30分はコマ落としを行わない。
- 目的:映像と音声のずれを調整し、同期を保つ。
もう一つの方式
動画の時間管理には、大きく分けて二つの方式があります。一つは広く知られている「ドロップフレーム」方式、もう一つは「ノンドロップフレーム」方式です。
ドロップフレーム方式では、映像と音声のずれを防ぐために、一定の間隔でフレーム(画像の最小単位)を間引く仕組みが用いられています。具体的には、1分間に2フレームずつ、1時間あたり約180フレームが削除されます。この方法は、テレビ放送のように正確な時間同期が求められる場合に有効です。しかし、編集作業においては、削除されたフレームを考慮する必要が生じるため、少し複雑になることがあります。
一方、ノンドロップフレーム方式では、フレームを一切削除しません。実際のフレームレートである29.97フレーム毎秒でタイムコード(時間情報)が進みます。そのため、タイムコード上での時間と実際の時間には、徐々にずれが生じていきます。10分あたり約3.6秒、1時間あたり約21.6秒のずれが生じることになります。このずれは、短時間の動画ではそれほど問題になりませんが、長時間の動画では無視できない大きさになります。
ノンドロップフレーム方式は、時間管理の正確さよりも、素材の完全性を重視する場合に適しています。例えば、インターネット上で公開される動画などは、秒単位の正確な時間管理はそれほど重要ではありません。それよりも、全てのフレームを保持することで画質の劣化を防ぐことの方が重要視されます。そのため、インターネット動画の多くは、ノンドロップフレーム方式を採用しています。近年は動画配信サービスの普及など、放送媒体が多様化しているため、必ずしもドロップフレーム方式を使う必要性は薄れています。動画の用途や目的に合わせて、最適な時間管理方式を選択することが重要です。
項目 | ドロップフレーム | ノンドロップフレーム |
---|---|---|
フレーム | 一定間隔で削除 | 削除しない |
時間同期 | 正確 | ずれが生じる (10分あたり約3.6秒, 1時間あたり約21.6秒) |
編集 | 複雑 | 容易 |
画質 | 劣化の可能性あり | 劣化なし |
用途 | テレビ放送など正確な時間同期が必要な場合 | インターネット動画など素材の完全性を重視する場合 |
使い分けのポイント
動画を制作する上で、時間管理は大切な要素です。その時間管理の方法として、「落とし枠」と「落とし枠なし」という二つの方式があります。この二つの方式を使い分けることで、動画の仕上がりや視聴者への印象を大きく左右することがあります。どちらの方式を選ぶかは、動画の目的や公開方法によって異なりますので、しっかりと理解しておく必要があります。
まず、「落とし枠」について説明します。この方式は、一秒間に表示されるコマ数を調整することで、動画の長さと実際の上映時間を一致させる技術です。具体的には、一秒間に30コマ表示する設定でありながら、実際には29.97コマしか表示しないように調整することで、わずかな時間差を吸収しています。
「落とし枠」は、テレビ放送のように時間管理が非常に厳しい場合に適しています。放送時間は秒単位で決められており、少しでもずれが生じると番組全体に影響が出てしまうため、正確な時間管理が求められます。このような状況では、「落とし枠」を用いることで、動画の長さを放送時間枠にぴったりと合わせることができます。
一方、「落とし枠なし」は、一秒間に設定したコマ数をそのまま表示する方式です。例えば、一秒間に30コマと設定すれば、実際に30コマが表示されます。この方式は、動画共有の場など、時間管理の制約が緩い場合に適しています。数コマ程度のずれが生じても大きな問題にはならないため、時間調整の必要性は高くありません。
多くの動画編集の道具では、「落とし枠」と「落とし枠なし」のどちらかを選ぶことができます。動画を作る際には、まず動画の用途や公開方法をしっかりと確認し、どちらの方式が適切かを判断することが重要です。例えば、テレビ放送用の動画であれば「落とし枠」を、動画共有の場への投稿であれば「落とし枠なし」を選ぶと良いでしょう。適切な方式を選ぶことで、視聴者に違和感を与えず、スムーズな動画視聴体験を提供することができます。動画制作において、こうした時間管理の仕組みへの理解は、質の高い動画制作に欠かせない要素と言えるでしょう。
項目 | 落とし枠 | 落とし枠なし |
---|---|---|
コマ数 | 1秒間に29.97コマ (設定は30コマ) | 1秒間に設定したコマ数どおり |
時間管理 | 厳密 | 緩やか |
用途 | テレビ放送など、時間制約が厳しい場合 | 動画共有サイトなど、時間制約が緩い場合 |
メリット | 放送時間枠にぴったり合わせられる | 時間調整の必要性が低い |