質感描写:写真で素材感を表現する技

質感描写:写真で素材感を表現する技

写真について聞きたい

先生、「質感描写」って、絞りをすごく絞って撮るんですよね?でも、そうすると写真が暗くなりませんか?

写真研究家

いい質問ですね。確かに絞りを絞ると光が入る量が減るので、暗くなるように思えます。しかし、質感描写では、被写体の細部までくっきり写すことが目的なので、シャッター速度を遅くしたり、ISO感度を上げたりして明るさを調整します。

写真について聞きたい

なるほど。シャッター速度を遅くするということは、ブレやすくなるってことですよね?

写真研究家

その通りです。だから、質感描写をするときは三脚とリモートスイッチを使って、カメラが動かないようにすることが大切なんです。作例写真のように、倒木の朽ちた感じをしっかり出すには、ブレは大敵ですからね。

質感描写とは。

写真の撮り方や写真の加工に関する言葉で「質感描写」というものがあります。質感描写とは、絞りをF11やF16くらいに絞って写真を撮ることで、物の表面の質感、例えばザラザラ感やツルツル感をそのまま写し出す撮り方のことです。この質感描写で写真を撮るときは、手ブレが大敵です。三脚とレリーズを使って、カメラを揺らさないように静かにシャッターを切りましょう。カメラの設定は、JPEG形式で撮るなら一番高画質の設定を選び、もしできるならRAW形式で撮ってTIFF形式に現像するのがおすすめです。レンズは、くっきりした写りのレンズの方が質感描写が得意です。作例の写真は、くっきり写るレンズを選び、倒木の腐った木肌の質感を出すために絞りをF16に設定して撮りました。

質感描写とは

質感描写とは

{質感描写とは、写真の題材となるものの表面の触感や材質の感じまでも写し取る表現方法のことです。}
まるで写真から、物のざらざらとした感じや滑らかさ、硬い感じや柔らかい感じといった触感が伝わってくるかのような、現実味あふれる表現を追い求めます。

質感描写を上手に行うためには、題材の細かい部分までくっきりと写し出すことが大切です。
具体的には、カメラの絞りを調整することで、写真のピントが合う範囲を広げ、全体にピントが合った写真にすることが基本となります。
絞りの値をF11やF16くらいに設定することで、題材の細かい部分まで鮮明に捉え、質感の表現を際立たせることができます。

さらに、光の使い方も質感描写において重要な役割を担います。
斜めから光を当てることで、題材の表面の凹凸が強調され、より質感が際立ちます。
順光ではのっぺりとした印象になりがちですが、逆光を活かすことで、輪郭が強調されたり、透過する光による透明感や輝きを表現することも可能です。

被写体の色や形だけでなく、その素材感までも伝えることが質感描写の魅力です。
例えば、木の温もりや金属の冷たさ、布の柔らかさなど、見る人に触感を想像させるような写真を目指します。
そのためには、事前の観察も大切です。
題材をよく観察し、どの角度から光を当てると、どのような質感が表現できるかをじっくりと考えることで、より効果的な質感描写が可能になります。

質感描写は、技術的な知識と表現への感性が求められる奥深い技法です。
様々な練習を通して、よりリアルで、見る人に感動を与えるような写真の表現を目指しましょう。

質感描写のポイント 具体的な方法 効果
全体にピントを合わせる 絞りの値をF11やF16に設定する 題材の細かい部分まで鮮明に捉え、質感の表現を際立たせる
光の使い方 斜めから光を当てる 題材の表面の凹凸が強調され、より質感が際立つ
光の使い方 逆光を活かす 輪郭が強調、透過光による透明感や輝きを表現
事前の観察 題材をよく観察し、光の方向を考える より効果的な質感描写が可能になる

撮影時の注意点

撮影時の注意点

物の表面の細やかな様子をうまく写すためには、写真のぼやけをなくすことがとても大切です。ほんの少しのぼやけでも、写真のくっきりとした感じが弱まり、せっかく丁寧に写した物の表面の感じが台無しになることがあります。ですから、カメラをしっかりと固定するために三脚を使うことをお勧めします。そして、シャッターを押すときの手ぶれを防ぐために、リモコンやタイマーを使うと良いでしょう。

また、風で物が揺れることにも注意が必要です。風が強い日は撮影を避けるか、風よけを使うなどして、物が揺れないように工夫しましょう。たとえば、屋内で撮影する場合でも、エアコンの風で軽いものが揺れることがあります。このような場合は、エアコンを一時的に止めるか、風向きを変えるなどの対策が必要です。

光の方向と強さも大切です。光が強すぎると物の表面の感じがうまく写らないことがあります。逆に、光が弱すぎると全体的に暗くなり、細部が分かりにくくなります。晴れた日の屋外で撮影する場合、直射日光を避け、日陰で撮影するか、薄い布で光を和らげると良いでしょう。室内で撮影する場合は、自然光が入る窓際で撮影するか、複数の照明を使って光を調整すると、物の表面の質感をより効果的に表現できます。

さらに、背景との組み合わせも重要です。被写体と背景の色合いや素材の違いによって、物の表面の質感がより際立つ場合があります。例えば、ざらざらした石を写す場合、滑らかな布を背景にすると、石の質感がより強調されます。反対に、布の質感を写したい場合は、石のような無機質なものを背景にすることで、布の柔らかさが際立ちます。このように、背景を工夫することで、被写体の魅力を最大限に引き出すことができます。

撮影時の注意点 具体的な対策
写真のぼやけを防ぐ 三脚の使用、リモコンまたはタイマーの使用
風による揺れを防ぐ 風のある日は撮影を避ける、風よけの使用、エアコンの風向きを変える/止める
適切な光の状態 直射日光を避ける、日陰で撮影、薄い布で光を和らげる、窓際で撮影、複数の照明を使う
背景との組み合わせ 被写体を引き立てる背景素材/色を選ぶ(例:布を背景に石を撮影)

カメラの設定

カメラの設定

写真の写りを左右するカメラの設定は、物の質感をうまく写し出すためにとても大切です。写真の絵柄の良し悪しを決める設定である画質については、写真一枚一枚を縮めて記録する「JPEG」形式で写真を撮る場合は、一番良い画質を選びましょう。もしできることなら、カメラが撮ったままの情報をすべて記録する「RAW」形式で写真を撮って、それを「TIFF」形式に変換するのが理想的です。「RAW」形式は「JPEG」形式と比べて、写真の明るさや色の情報といった多くの情報を含んでいます。そのため、変換時に明るさや色の細かい調整ができ、物の質感をより効果的に表現できます。加えて、写真の色の雰囲気を決めるホワイトバランスや写真の明るさを決める露出も、被写体の質感に合わせて調整することが重要です。撮った後に写真の編集ソフトで調整することもできますが、写真を撮る時にできるだけ良い設定にすることで、より自然で美しい質感を表現できます。

例えば、木製の家具の質感を表現したい場合を考えてみましょう。まず、画質は「RAW」形式を選択し、後から編集できる自由度を高めます。ホワイトバランスは、室内の照明に合わせて「電球」や「蛍光灯」などに設定することで、木の温かみのある色合いを忠実に再現できます。露出は、家具の細部まで見えるように明るすぎず暗すぎない適切な値に設定します。少し暗めに撮影し、編集ソフトで明るさを調整する方法もあります。

また、金属の質感を表現したい場合は、画質は同様に「RAW」形式を選びます。ホワイトバランスは、曇りの日なら「曇り」、晴れた日なら「太陽光」など、周りの光の状態に合わせます。金属の光沢を表現するために、露出は明るめに設定することが多いですが、明るすぎると白飛びしてしまうので注意が必要です。

このように、被写体の種類や撮影環境に合わせてカメラの設定を調整することで、よりリアルで魅力的な質感を写真で表現することができるのです。色々な設定を試してみて、自分の思い描く質感を表現できるようになりましょう。

被写体 画質 ホワイトバランス 露出
木製の家具 RAW → TIFF 電球/蛍光灯 適切な値(やや暗めも可)
金属 RAW → TIFF 曇り/太陽光 明るめ(白飛び注意)

レンズの選択

レンズの選択

写真の良し悪しは、レンズ選びで大きく変わります。被写体の質感表現においても、レンズ選びは重要な役割を担います。一口にレンズと言っても、それぞれに個性があり、描写力も様々です。

一般的に、解像度の高いレンズは被写体の細部まで鮮明に写し出せるため、質感表現に優れています。緻密でシャープな描写が持ち味のレンズは、まるで触れられるかのような錯覚を覚えるほど、被写体の質感をリアルに再現してくれます。特に、風景写真や建築写真など、細部までくっきりと見せたい被写体には最適です。

中でもマクロレンズは、被写体に極めて接近して撮影できるため、肉眼では捉えられない微細な質感を表現するのに適しています。例えば、花びらの繊細な模様や昆虫の触角の微毛など、普段は見過ごしてしまうような細部まで鮮やかに写し出すことができます。マクロレンズを使うことで、まるでミクロの世界を覗き込んでいるかのような、独特の写真表現が可能になります。

一方で、柔らかな描写が特徴のソフトフォーカスレンズは、被写体にふんわりとした雰囲気を与えます。人物撮影などでは、肌を滑らかに見せたり、幻想的な雰囲気を演出したりする際に効果的です。しかし、ソフトフォーカスレンズは、あえてピントをぼかすことで柔らかな表現を得ているため、被写体の質感をはっきりと表現するには不向きです。シャープさを求める質感表現には適していません。

このように、レンズにはそれぞれ得意とする表現があります。被写体の質感、そして自分が表現したい雰囲気を考慮して、最適なレンズを選び抜くことが、より良い写真を撮るための第一歩と言えるでしょう。

レンズの種類 描写の特徴 質感表現 適した被写体
高解像度レンズ 緻密でシャープ 優れている、細部まで鮮明 風景、建築など
マクロレンズ 極めて近接撮影可能 肉眼では捉えられない微細な質感を表現 花びら、昆虫など
ソフトフォーカスレンズ 柔らかな描写、ふんわりとした雰囲気 被写体の質感をはっきりと表現するには不向き 人物撮影など

作例写真の解説

作例写真の解説

この作例写真では、朽ち果てた倒木の質感表現に力を入れました。そのため、まずレンズ選びからこだわりました。解像度の高い、輪郭をくっきりと写し出すレンズを選び、さらに絞り値をF16まで絞り込みました。絞り込むことで、ピントが合う範囲が広がり、倒木の表面の凹凸や木目の細部まで鮮明に捉えることが出来ました。まるでそこに在るかの様な、手で触れられたらボロボロと崩れてしまいそうな、そんな質感を写し出したかったのです。

次に光の方向にも気を配りました。光は斜めから当てることで、陰影が強調され、倒木の立体感と質感を際立たせる効果があります。今回は、倒木の表面の凹凸を際立たせるために、あえて強い光ではなく、柔らかな光を選びました。

安定した撮影のために、三脚とリモートスイッチも使用しました。三脚を使うことでカメラをしっかりと固定し、リモートスイッチを使うことで、シャッターを押す際の振動も防ぐことが出来ます。これらの工夫によって、わずかなブレもなく、極めて鮮明な写真を撮ることが出来ました。

これらの技術的な工夫に加えて、構図にもこだわりました。倒木の周りの環境も写し込むことで、朽ち果てた倒木が周囲の自然と調和している様子、時間の流れを感じさせる雰囲気を表現しようと試みました。

これらの工夫を通して、見る人に倒木の朽ちた質感、そして、その場の空気感までも伝えることが出来たと考えています。単なる記録写真ではなく、見る人の心に何かを感じさせる、そんな一枚を目指して撮影しました。

項目 詳細
レンズ 解像度の高いレンズを選択、F値16まで絞り込み
斜めからの柔らかな光
機材 三脚とリモートスイッチを使用
構図 倒木の周りの環境も写し込み